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ニーズをサービスに具現化するエンジニアマインド

【VOICEs - 社内インタビュー】「Glue(接着剤) + Gent(人)」(グルージェント)の社名が示すのは、クラウド領域の技術を結び、お客様へお届けする架け橋となって課題を解決すること。同社代表取締役CEOの鈴木都木丸にエンジニアマインドにあふれたチームの強みを尋ねました。

ピープル2015年8月25日

クラウドサービスを使いやすくする

- グルージェントで現在注力されている領域とは何でしょう。

グルージェントは1999年の創業以来、主にソフトウェア開発に関する高度な技術力をアドバンテージとしてビジネスを展開してきました。2008年にサイオスグループに加わって以降は、数多くのプロジェクトやビジネスで力を合わせ、お客様の課題解決に取り組んできました。

近年特に力を入れていることは、お客様がクラウドをビジネスにスムーズに活用し、オンプレミス環境からの移行を円滑に行えるようにする、グルージェントならではのナレッジを生かしたクラウドサービスの開発・提供です。

クラウドを利用するにあたってお客様が直面するセキュリティ上の不安を取り除いたり、クラウドをより多くのシーンで活用していただくためにGluegentシリーズなどのクラウドサービスを提供しています。

― クラウドと一口に言っても、パブリックやプライベート、さらにIaaSなどのインフラからPaaS、SaaSなどのアプリケーションレベルまでサービスの種類は多岐にわたり、世界的なサービス合戦が繰り広げられています。「どこから着手し、どのサービスを自社に取り入れれば良いのか」と迷われるお客様もいらっしゃるのではないでしょうか。

2014年あたりから、クラウド自体に関する技術、セキュリティに関する問い合わせから、サービスの内容自体に関する踏み込んだ問い合わせに変化してきました。

クラウドというキーワードがバズワードだった時代を超え、より具体的にITインフラの運用保守やセキュリティ管理の負担・コストを減らし、その上で、ビジネスの競争力やイノベーションを促す最新の技術、または業務コラボレーションの強化や生産性向上に必要な機能を経営に活かそう、とお客様の目的が明確になってきていることは確かです。

― クラウドサービスの社内利用を認める企業も、2年ほど前と比べるとかなり増えました。

そうです。ただその一方で、「クラウドは導入したけれどもメールサービスしか使っていない」という企業と、それ以外も含めて積極的に先進的なサービスを取り入れる企業との間で二極化が進んでいます。メールサービスだけを利用する、という状況では前述したようなクラウドのメリットを経営強化に活かしている、とは言い切れないと考えています。

一例ですが 、メールサービスに加えて、クラウドストレージを利用するだけでも、既存の高額なファイルサーバーにかけている高い維持費を大幅に削減できる余地が大いにあります。また、コスト削減だけでなく、意思決定やアクションの精度向上など様々な業務革新においても、クラウド活用の重要性は高まっていると言えます。

Gluegentシリーズを開発している背景にあるものとは何でしょう。

お客様がクラウドを導入する際、またはクラウドを利用していくうちに利用環境に応じた多様な要望をお持ちになられます。

ところが、クラウド事業者が提供するサービスや機能は、ビジネスユーザーの要望をすべて網羅することができるわけではありません。利用者側のニーズと提供されるサービスの間のギャップが、クラウドの浸透を阻害している要因になることもあります。

たとえば、グルージェントに寄せられる数々のご要望の中で多かったものの一例として、「Google Appsにおける共有アドレス帳やグループスケジューラー機能が欲しい」というものがあります。個々の社員が利用するGoogleの連絡先を部署や社内のプロジェクトメンバーで共有してコラボレーションを進めたいけれども、もともとその機能がない。Google Calendarも優れたサービスですが、こちらもチームのメンバーの予定を並べて表示することはできません。

こうした声を受けて、グルージェントでは、各種クラウドサービスを導入しやすく、より快適に使える拡張機能を開発し、製品化してきました。それがGluegentシリーズです。

様々なニーズに応えるGluegentシリーズ

― Gluegentシリーズには複数の製品がありますね。その中から代表的な製品とその特徴を挙げてもらえますか。

まず、先ほど挙げたGoogle Appsの機能を拡張するクラウドサービスです。「Gluegent Apps 共有アドレス帳」は、メールの宛先を階層構造から選択できるようにし、アドレス帳を管理者が効率よく一元管理できます。こちらはOffice 365にも対応します。またモバイル用途としては、GmailアプリやOutlookアプリに組み込んで利用できる共有アドレス帳も提供される予定です。


多くの要望に応えて開発された「Gluegent Apps 共有アドレス帳」

Gluegent Appsグループスケジューラ」は、チームメンバーの一日の予定を帯状に表示したり、一週間の予定を一覧/帯状に表示して一目で確認したりできるツールで、Google Calenderと併用することもできます。


Google Calendarをベースにチームでの予定管理機能を拡張する「Gluegent Apps グループスケジューラ」

Gluegent Flow」は、回覧・承認・稟議といった社内のワークフローをクラウド化するアプリケーションです。クラウドサービスなので「いつでも」「どこからでも」アクセス可能なため、海外出張中でもワークフローを進めることが可能です。標準的なワークフロー機能に加え、Google Appsをはじめ各種クラウドサービスとの連携が可能な点に特色があります。


日々の業務を改善、効率化に役立つ「Gluegent Flow」

Gluegent Gate」は、各種クラウドサービスへのアクセスを特定のネットワークや許可された特定のPC、スマートフォン、携帯電話などの端末に制限することで、各社のポリシーに沿ったアクセス制御に加え、ID管理・シングルサインオンを実現するクラウドサービスです。クラウドへのアクセス制御をデバイス単位でシンプルに行えます。

クラウドサービス認証の定番であるSAML認証はもとより、Office 365のWS-Federation、汎用的にWebアプリケーションと認証ができる代理認証も利用できますので、Google Appsだけでなく、Salesforce.com、Office 365、DropBox、cybozu.comなどの主要なクラウドサービスとのシングルサインオン、アクセス制御がGluegent Gateだけで実現可能です。


組織のセキュリティポリシーに沿ったアクセス制御、ID管理・シングルサインオンを実現する「Gluegent Gate」

さらにクラウドストレージ上での情報漏洩防止策には、「CloudLock」が有効です。クラウド活用のメリットの一つとしてデータの共有がありますが、共有に関する設定は管理者ではない個人が実施するために、間違った人とデータを共有してしまったり、共有してはいけない情報を共有してしまったりすることがリスクとして存在します。CloudLockはこうした不適切な共有を検知することができ、場合によっては強制的に共有を解除することも可能です。こちらは米国CLoudLock, Inc.が開発したサービスですが、全世界10万以上のアカウントで利用される実績があります。

クラウドの情報損失対策としては、米国Backupify, Inc.が開発した「Backupify」があります。クラウドはデータの分散、冗長化を標準で実施しているため、インフラ故障などに備えたバックアップの必要はありません。しかし、ユーザーが誤って、または故意にデータを削除してしまうことがあります。またクラウドの容量の都合でデータを削除する必要性が出てくることもあり得ます。Backupifyは日々のクラウド情報を自動的にバックアップしていきますので、過去に削除されたデータが必要になった際には、速やかなデータ復旧が可能となっています。Backupifyは全世界で8,000社以上の企業に導入実績があります。

― グルージェントの製品はすべて自社開発にこだわっている、というわけではないのですね。

ニーズを分析した上で、自社開発するよりもすでに実績のあるサービスの方がお客様にメリットがあると判断すれば、逆に技術力を目利きとして生かし、ご提供することもあります。その意味で、市場に対してアンテナは常に張っています。もちろん、CloudLockBackupifyGluegentシリーズ同様に製品の日本語でのサポートをグルージェントがワンストップで提供しますので、安心して使っていただけます。

― 最近では新たなソリューション分野にも挑戦されているようですね。

現在提供しているサービスの機能強化やモバイル対応強化はもちろん継続して開発していきますが、日本企業の社内には「システム化の要件が担当者の交代などによって短期間に変化しやすい」業務があります。これらはその性質上、なかなかシステム化しにくい、あるいはシステム化してもすぐ陳腐化してしまう「取り残されたシステム」といえます。これらを手際よくシステム化する新しいタイプのクラウドサービスを近々ご提供したいと考えています。

グルージェントを支えるエンジニアマインド

― グルージェントのコアコンピタンスである技術力がプロダクトやサービスを支えているのですね。

かつては「高い技術力を持ったエンジニア集団」というのが、グルージェントのアイデンティティでした。クラウドサービスの開発、提供がメイン事業となってきている現在でもやはり、エンジニアの技術力にはこだわりを持ちたいですね。

― 鈴木さんもエンジニア出身です。どういう経緯でグルージェントに加わったのですか。

グルージェントの創業者で前CEOである栗原傑享とのつながりで入社しました。2000年のことです。それまで私は独立系のSI企業で、主にVisualBasicを用いてシステムを開発していました。その頃、特に魅力を感じていた開発ツールが、Delphiだったこともあり、NiftyServeのユーザーフォーラムの一つ、FDELPHIという日本最大のDelphiコミュニティに参加するようになりました。そこのシスオペ(管理者)をやっていたのが、栗原でした。彼は現在、サイオスの米子会社Glabio, Inc.のCEOですが、そこでCOOを務めている新井正広とも、FDELPHIつながりで知り合いました。設立当時のグルージェントは栗原を中心とした人脈からなる数名規模の会社でした。

グルージェントがGluegentシリーズの開発に踏み切ったのは、サイオスグループに合流して2年目の2010年頃からです。当時、創業期から比べると社員数も増えていましたが、SIビジネスで収益を大きくするにはさらなる技術者の数が必要でした。一方で、高い技術力を備えた人材はそうそう簡単には集まりません。「そもそもグルージェントでやりたいことはSIなのか」という議論も社内で重ねた結果、少数精鋭のエンジニアで収益を上げるにはやはり自社サービスの開発、提供しかないという結論に達しました。何を作れば良いかという議論の中で、Google Apps案件でよく要望が出てくる機能を作ることで、サイオスのリセール事業とのシナジーが出ると判断し、開発に着手したことをよく覚えています。

2012年には製販一致を実現するため、Google Appsのリセール事業がサイオスからグルージェントに移管され、そこから開発エンジニアだけでなく、営業、プリセールス、サポート、業務管理などのいろいろな職種の方がメンバーに加わり、現在のグルージェントに続く第二の創業期を迎えたと言っても過言ではないと思います。

― 新たな技術が次々と出てくるクラウド界隈ですが、グルージェントでは人材をどうやって確保、あるいは育成しているのでしょうか。

主に、SNSや技術ブログへの投稿がきっかけで知り合ったり、各種コミュニティに参加してこちらから声をかけたり、などが多いでしょうか。投稿をきっかけに、この人はこういうアプリを作っているんだ、こういう研究開発をしているんだ、といった気づきが得られます。実際に会ってみると好奇心や探究心が人一倍旺盛で、意気投合することもよくあります。

私の考えですが、こうしたユニークな人材を、会社で育てる、研修講座を受けさせるなどして教育して成長させる、というのは難しいのではないかなと思っています。彼ら/彼女らは「やらされ感」がない。一般的には、新規ビジネスの立ち上げに必要な技術習得やマーケットのリサーチなどの「努力」を「努力」と思っていない。 極端に聞こえるかもしれませんが、普段どんなに遊んでいようと、自分が興味を持ったことはどんなにハードルが高くても自主的に試行錯誤し、自ら軌道修正しながら黙々と形になるまでやりきる力を持っています。そうしたエンジニアマインドを持った人材がグルージェントに多くいると感じています。

― そうした人材のモチベーションを高めるのは難しそうですね。

上からこういう方法でやれ、と命令するのではなく、100%自発的なモチベーションでやらせる時が一番力を発揮してくれます。言い方も大事です。「こうすると面白いんじゃないかな」と提案してみたりとか。エンジニアマインドを持った人材は「強制されたら、実力の半分も出ない」ということが珍しくないのです。

グルージェントはフラットな組織で上司部下や指揮命令系統がないのですが、これもエンジニアマインドを持った人材が力量を発揮できる自由な雰囲気を作ろうという意図からです。逆に、指示を待つタイプの人だと居心地が悪いかもしれません。

― 自由だと、組織がぐちゃぐちゃになりませんか。

なりますよ、最初は。ただ、方向性やベクトルが一緒に向いていれば、物事が進みます。何かで行き詰まった時も周りに相談して寄ってたかって解決していく。もちろん、全てのシーンで効率的だとは言えませんが、課題を解決するためにエンジニアマインドを持ったメンバーが信頼と自由を前提に立ち向かう構図は、頼もしいとすら感じますね。

人間は慣れと感情の生物だと私は考えています。慣れ、というのはそれだけ環境に順応できるということです。よく言われるように、人は低いレベルの環境に順応しやすい特性があります。しかし、高いレベルにも順応していくことができる。周りに高いレベルの人がたくさんいると、「これが当たり前なのかな」と感じ取り、「普通」のレベルが知らず知らず向上していきます。もし高校時代を麻布や開成で過ごすと東大受験は当たり前、そのために勉強はものすごく頑張るのが「普通」となっていくようなものかも知れません(笑)

― 鈴木さんにとって今のモチベーションはなんでしょうか。

現在は、経営者としての立場がメインですが、グルージェントのコアコンピタンスである技術力をいかして、ゲインをいかに最大化するか。全体最適の視点から経営資源を配分し、ビジネス基盤をさらに磐石にすることに集中しています。

あるプロダクトやサービスを展開する際のビジネスモデルも、フリーミアム戦略を活用してまずは広いユーザーにリーチするのか、プレミアムサービスをサブスクリプション契約で提供して差別化を図るのか、国内市場か海外市場か、決まった答えがあるわけではありません。

社内にリソースがない場合は、外部のさまざまなクラウド事業者とアライアンスを組むメリットを模索することもあります。あらゆる選択肢を考慮に入れながら、市場に浸透しつつあるクラウドの波を、もう一つ上の段階にもっていくことが、いまの私のモチベーションですね。

クラウドは2年後、3年後、エンタープライズのビジネス基盤を着実に変えていくと確信しています。これからもグルージェントは常にその先を見ていきたいと思います。

● プロフィール
株式会社グルージェント
代表取締役CEO
鈴木都木丸(Tokimaru Suzuki)

大学卒業後、独立系受託開発会社にてエンジニアとして勤務。2000年グルージェントに入社し、2014年に代表取締役CEOに就任。Delphiでは三原幸一名義で「基礎からわかるDelphi」シリーズ(秀和システム)を執筆。日本では数少ない解説書として、エンジニアに重宝されている。

(取材/2015年7月)