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OSSの進化が実感できるテクニカルサポート

【OSSのプロフェッショナルたち #3】OSSを利用する企業から寄せられる問い合わせに対応するのが、サイオス OSSテクニカルサポートチームの多賀直希(たが なおき)です。業務で心掛けていること、多様な人々が織りなすOSSコミュニティの面白さを尋ねました。

ピープル2017年6月 6日

お客様の問い合わせ内容からポイントを絞り込んでいく

― 多賀さんが日頃担当する業務の内容から教えてください。

多賀:OSSに関するさまざまな問い合わせを受ける「サイオスOSSよろず相談室」のテクニカルサポートを担当しています。私の担当は、Linux OSのほか、OSSのWebサーバーやアプリケーションに関する問い合わせへの回答です。

「OSSよろず相談室」の契約を結んでいただいているユーザー企業の情報システム部門の方、システムインテグレーターなどのIT企業のサポート部門の担当者などから質問を受けます。やりとりは主に、ユーザー専用のポータルサイト内のWebフォームを介しておこなわれます。送っていただくスクリーンショットやサーバーログなどを手掛かりにして、問い合わせに対する迅速かつ正確な回答を心がけています。

― どのような問い合わせが寄せられるのでしょうか。最近の傾向を教えてください。

多賀:新しくリリースされたOSS、または新規に採用される予定のOSSに関する情報収集が高いウェイトを占めていますね。OSSを長年利用されるお客様からも、それまで利用したことがないOSSを導入した場合やLinuxカーネルのバージョンアップによって、既存のOSSやシステム環境に与える影響を知りたい、といった質問も多くいただきます。特に多く寄せられるのが、Apache httpdを含むWebサーバー系の問い合わせです。JavaのWebアプリケーションを利用されているお客様ではApache Tomcatに関するものも上位を占めます。

また、脆弱性についての問い合わせが近年かなり増えています。とりわけ、2017年3月に被害が報告された、JavaのWebアプリケーションを作成するためのソフトウェアフレームワーク「Apache Struts2」にリモートから任意のコードを実行できる脆弱性が見つかった際には、「OSSよろず相談室」にも多くのお問い合わせをいただきました。ほかにも「Linuxカーネルの脆弱性」に関する問い合わせも最近増えています。


「新しい技術を含めて、さまざまな見聞を広めたいです」と話すOSSよろず相談室 サポートチームの多賀直希

― 問い合わせがあった場合、どのように調べるのでしょうか?

多賀:まず、ベンダーのサイトや開発コミュニティのサイトに情報が出ていないかを確認します。開発元が異なるOSSを組み合わせて利用されている場合は、関係するコミュニティサイトも洗いざらいチェックします。わずかな情報しか出ていない場合には、ソースコードを読みながら原因や対策を調査するケースもあります。

― お客様がOSSを用いられる環境をできるだけ再現して検証するというのがOSSよろず相談室の特長だそうですね
(関連記事:「ユーザー同士の交流深まる 〜SOY倶楽部が活動開始」)

多賀:はい。OSSよろず相談室ではできる限りお客様の利用環境を伺い、近い状況を再現してエラーが出る原因などを探っていきます。実際にコマンドを打って初めて気づくソフトウェアの挙動が少なからずあるためです。ただ、お客様をお待たせしないように、最初にもらった情報やログである程度、問題点がどこにあるか、ピントを合わせていくことがサポートチームとして重要になります。自分だけの視点だけでなく、さまざまな分野のOSSを得意とする上級エンジニアの助言を総合しながらポイントを絞り込んでいきます。

新しい技術に触れる面白さ

OSSよろず相談室では80種類以上のOSSに関する問い合わせを受けていますよね。引き出しを増やしたり、情報をキャッチアップしたりするために多賀さんの場合は、どんな心掛けをしているのですか。

多賀:日課としてコミュニティのサイトや、IT系のニュースサイトで話題になっている技術はこまめにチェックしますね。近頃だと分散型SNSであるMastodonが話題になりましたが、そういう場合はさらにエンジニアの技術ブログを見て情報収集したり、自分でも構築するなど手を動かしたりしています。新しい技術が好きなので、キャッチアップは特に意識していなくて、ごく自然に情報に触れているという感じですね。

それから、「OSSよろず相談室」の勉強会でも講師役を務めさせていただく機会があるのですが、自分の講演資料を作るのは蓄積した知識の整理にもなるので、これはとても良い機会ですね。


「OSSよろず相談室」のユーザーが参加する「SOY倶楽部 第4回OSS勉強会」(2016年10月開催)では多賀も講師役で情報提供しました。標準サポート期間が2020年11月30日に設定されたRed Hat Enterprise Linux(RHEL)6からRHEL7への移行に際して、カーネル3.1系における新機能や移行時の留意点を説明しました。

― ユーザーコミュニティが主催のイベントにも、積極的に参加されているそうですね。

多賀:はい。いろいろなイベントに参加していますが、とりわけ日本Javaユーザーグループ(JJUG)が主催しているJJUG CCC(年2回開催)とJJUGナイトセミナー(月1回開催)には積極的に参加しています。Javaは色々な企業システムなどで用いられているので、Javaエンジニアが携わる業種もさまざまです。Javaコミュニティにコミットする企業も増え、技術的な課題克服などをコミュニティ主導で盛り上げていこうという動きなども出ており、コミュニティ活動はとても活発に行われていると感じています。ちなみに、サイオスにもかなりJavaに詳しいエンジニアの先輩がいて色々と刺激を受けています。

それから、2017年3月に開催されたオープンソースカンファレンス(OSC)に初めて参加しましたが、サイオスのブースに来られた方とのやりとり、他のブースの展示やセッションなど私も楽しみました。特に、RaspberryPiを使ったハードウェアの展示には思わず足を止めてしまいました。私も高専でロボットのモーター制御など電子工学をいろいろかじったので、楽しかったですね。

私も今は、どんどん技術を吸収していって、それが結果的に、自分のスキルアップやテクニカルサポートチームのパワーアップにつながればと思います。ただ、いつか自分もそういうコミュニティの開発する側にいずれ回ってみたいな、という思いはあります。

― 多賀さんがサイオスに入社された動機を教えてください。

多賀:進化し続けるソフトウェアに将来性を感じたことと、新しい技術に直に触れたいと思ったこと、サイオスではそれができると信じたことです。
ITはまだまだ発展の途上にあるのだと感じます。何か一つの問題が解決しても、別の新たな課題が出てくるということが当たり前ですが、それはそれだけ発展の余地が大きいと考えています。

特に、OSSは次々と新しい領域が開かれているようで、商用ソフトウェアとは異なる種類の面白さを感じますね。ITの未来は明るいと思います。

― そういえば、プライベートでは旅行もするそうですね。

多賀:はい。休日を使って小旅行をするのが好きです。先日は、実家の広島に帰る途中で、倉敷市の美観地区を散策してきました。知らない土地でいろいろなことに出会ったり、地元ならではのおいしいものを食べたりするのが楽しいです。OSSに限らず、色々と見聞を広めたいですね。

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