ブロックチェーン技術の基礎とWeb3の最新動向を解説

【イベントレポート】2022年7月15日、日本OSS推進フォーラムの「Web3 ワーキンググループ」第1回勉強会がオンラインで開催されました。ブロックチェーン技術を用いた次世代ウェブとして注目される「Web3」(ウェブスリー)は、私たちにどのような世界をもたらすのでしょうか。

テクノロジー2022年8月24日

ブロックチェーン技術の特長とは

 勉強会のトップバッターを務めたのは、FRAME00(フレームダブルオー)株式会社のCTO(最高技術責任者)、Aggre(アグリ)さんです。ショートセッションのテーマは、「ブロックチェーン技術の基礎、関連技術トレンド」です。Aggreさんは、ブロックチェーンの仕組みを平易に説明したうえで、イーサリアムとWeb3(ウェブスリー)の関係、さまざまな技術コミュニティやエコシステムの動向に触れました。

 ブロックチェーンとは、P2P*1型ネットワークの一種です。「クライアントサーバー型ネットワークと異なり、取引(トランザクション*2)を仲介・管理するサーバーがありません。P2P型ネットワークでは各参加者がサーバーの役割を少しずつ果たしながらサービスを成立させている、という世界観です」(Aggreさん)。

 ブロックチェーンに参加する各個人が行ったトランザクションに関するデータは、暗号化アルゴリズムによってハッシュ値と呼ばれる値に変換されます。このハッシュ値がブロックチェーンのブロックに記録されます。ブロックチェーンは、一連のトランザクションを記録するハッシュ値の連鎖、ハッシュチェーンと捉えることができます。

「ハッシュ値は連鎖しており、後からその前後関係を入れ替えることは原理的に許されません。つまり(順序性を担保したうえで)トランザクションの時系列を正確に表現できます。これがブロックチェーンを用いる金融取引が成立する前提になっています」(Aggreさん)

 AggreさんがCTOを務めるFRAME00では、OSS開発者(デベロッパー)やクリエイターとその活動を支持するサポーターが持続的に経済的価値を得られる、エコシステムの社会実装を進めています。基軸通貨としてやりとりされるDEVトークンは、FRAME00が開発した分散型プロトコル「DEVプロトコル」のもとで流通します。DEVプロトコルは、Ethereum(イーサリアム)と呼ばれるオープンソースのブロックチェーン上で運用されています。なお同社では、2022年5月には、DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)の効率的な立ち上げや運営に必要な機能がパッケージされた、DEVプロトコルの開発キット「Clubs(クラブス)*3」を発表しました。

イーサリアムとWeb3に共通するもの

 Aggreさんはブロックチェーンであるイーサリアムの特徴を大きく次の3つに整理します。

 一方、暗号資産やメタバース、DAOなどの実装において注目され、日本政府も環境整備に取り組む昨今話題の「Web3」とイーサリアムはどのような関係にあるのでしょうか。

「Web3とイーサリアムの世界観には通じるものが多々あります。とはいえWeb3は見る立場や角度によってさまざまな解釈が生まれています。あるエンジニアはWeb3をソフトウェアの実行環境として注目しているかもしれません。また既存のデータベースを置き換える新たな仕組みと捉える人もいるでしょう。さらに、DAOのような支配規範、合意形成の仕組みと捉える人もいます。どれも間違いではないですが、特定の論点に閉じたり一側面に偏ったりすることなく、総合的に評価することが重要です」(Aggreさん)

技術コミュニティやエコシステムの動向

 イーサリアムのエコシステムでは、EVM*4互換のチェーンがたくさん生まれています。有名なところでは「Polygon」が知られています。非常に安価なトランザクションフィーで実行できるのが特徴です。また、EVM上で動くスマートコントラクトの開発環境として人気が高いのが「Hardhat」というOSSです。一方、EVM互換ではなく、独自の仕様を盛り込むことで新たな価値観の創出を試みるブロックチェーンとして「Flow」などが知られています。このようにEVM互換/非互換を問わず、さまざまなチェーンが登場する大きな要因としてAggreさんは、トランザクション スループットの高速化を挙げます。

「ただ多数のチェーンが乱立することは、エコシステムの断片化につながり、ユーザーにも開発者にも好ましい状況ではありません。そこで解決策として注目されるのが、レイヤー2(L2)と呼ばれるソリューションです」(Aggreさん)

 L2では、イーサリアムとは別のチェーンやオフチェーン(ブロックチェーンではないコンピューター)でトランザクションのデータを処理し、スループットを高速化します。ただし、トランザクションの正当性の検証は最終的にイーサリアムが行うことでセキュリテイを担保します。特に正当性を高速に検証するゼロ知識証明(zero-knowledge proof)を実装したL2ソリューションが注目されています。

 質疑応答では、これからブロックチェーン技術を始めたい人が体験するのに適した環境に関する質問などに対して、Aggreさんが回答しました。

これからもさまざまな情報を交換する場として

 この日のイベントの視聴者数は延べ60人と盛況でした。「Web3.0と政府動向」「Web3.0の概要とHyperledgerコミュニティでのWeb3.0の動向」「DAOによるWeb3ビジネスの実体」と題して、3つのライトニングトークも行われました。Web3の取り組みが非金融以外のさまざまな領域で展開されることや、その展開スピードが非常に早いことが伝わってきました。

 日本OSS推進フォーラムの理事を務める、サイオステクノロジー上席執行役員の黒坂は、「日本OSS推進フォーラムは2004年の設立以来、OSSを軸にさまざまな部会を介して多くの参加企業が交流しつつ活動を展開してきました。多くの企業がメンバーとして参加するフォーラムです。さまざまなテーマでディスカッションを深めたり、参加企業を対象とした技術調査などを行ったりできる場です。ご参加の希望や、取り組みたいテーマをお持ちの方はぜひ私たちにお声がけください」と呼びかけました。


*1 P2P(Peer to Peer)
すべてのコンピューター(ノードと呼ぶ)が対等な関係にあるネットワークのこと。

*2 トランザクション
ブロックチェーンにおける取引のこと。イーサリアムでは暗号資産(トークン)をやりとりする際などに、APIを介してコンピューター間で授受されるデータ(I/Oに関する情報)を意味する。

*3  Clubs
DAOツール「Niwa」で発行したソーシャルトークンを瞬時にアップグレードして、分散型ファンディングの真価を発揮するDAO向けポータルをローコードで開発可能なDEVプロトコル上で稼働するフレームワーク。

*4  EVM
Solidity(ソリディティ)という言語で開発されたプログラムを実行するイーサリアム上のVM(Virtual Machine)

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