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パブリッククラウドを使いこなすポイントは?

【イベントレポート】サイオステクノロジーと日本アイ・ビー・エムは2015 年7月16日、クラウドサービスの活用ポイントを探るセミナーを開催。レポート後編では、物理/仮想サーバーを提供するパブリッククラウド「SoftLayer」を効果的に、かつ可用性を高めて活用する手法をご紹介します。

テクノロジー2015年9月30日

利用者数を伸ばすIaaS「SoftLayer」

日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)のクラウド・エバンジェリスト 北瀬公彦氏は、『基礎から解説! IBMのパブリッククラウド「SoftLayer」』と題して、国内企業の導入事例を交えながら、SoftLayerの特徴を説明しました。


日本IBM クラウド・エバンジェリストの北瀬公彦氏

SoftLayerは、現在140カ国、25,000以上の顧客が利用するIaaSです。北瀬氏は、その特徴を次の3つにまとめました。

グローバルな高速ネットワークという点では、世界各地を結ぶデータセンターの充実度が挙げられます。2014年12月には、東京データセンターが開設されました。15カ国40拠点に展開済みのデータセンターは、2015年度にさらに拠点の拡大が見込まれています。

「冗長化された10Gpbsの高速ネットワークはエンタープライズで求められる高いスループットを提供します。その上、プライベートネットワークは送受信が無料。パブリックネットワークも受信はすべて、送信は一定容量までが無料で利用できます。コストを抑えたDR(Disaster Recovery)環境の構築、各地の拠点を結ぶテレビ会議、高品質の動画配信にも採用されています」(北瀬氏)

物理サーバーと仮想サーバーを用途に応じて選択したり、組み合わせたりできる柔軟性もまた、SoftLayerの特徴です。

「例えば、チューニングが必要なRDBMS、ログデータなどのビッグデータの解析処理、HPC(High Performance Computing)などの用途には物理サーバーを、一方でスケーラビリティーを必要とするWeb/APサーバーには仮想サーバーを、と適材適所での使い分けが可能です。豊富なサービスと2,000以上のAPIがきめ細かなニーズへの対応や短期間での立ち上げをサポートします」(北瀬氏)

SoftLayerを導入する日本企業も相次いでいます。メーカーや銀行などが拠点間での業務コラボレーションや営業強化のための情報活用基盤として、SoftLayerを利用する事例が紹介されました。

「今後も、IBMではオンプレミスからオフプレミスまで広くカバーするとともに、個々のユーザーおよびシステムに適したクラウドを提供していきます」と北瀬氏。

SoftLayerに関する日本語による情報発信や情報共有、普及・人材育成については日本SoftLayerユーザー会が支援しています。北瀬氏の講演から、コミュニティー活動の熱気も伝わってきました。

SoftLayerとNginxを組み合わせたWeb高速化

続いて、サイオステクノロジー OSS事業企画部 村田龍洋がプレゼンを行いました。

「モバイル環境やスマートデバイスの普及によりWebサービスへのリクエストがこの4年間で約1.7倍に増加しています。企業においてはWebサービスの高速化や増加するユーザー接続数への対応が求められています」(村田)

この課題を解決するために村田が提案するのが、SoftLayerと世界のトップ1,000サイトの4割が使用するWebサーバー「Nginx」を組み合わせたソリューションです。

Nginxは、2015年1月時点でWebサイト全体の22.9%、2番目のシェアを持つまでにシェアを拡大したオープンソースのHTTP Webサーバーです。その特徴は、高速・軽量・高機能であること。1つのプロセスの中で複数のクライアントからのリクエストを処理するイベントループ方式により、タスク切り替えに伴うリソース消費を"カット"し、高速な処理を可能にします。

「Nginxのロードバランサーとしての処理能力は、メモリーよりもCPU資源に左右されるという傾向があります。そこで、高性能なCPUを備えた物理サーバー(ベアメタルサーバー)を選択できる、SoftLayerのようなパブリッククラウドとの相性はよいと言えます」(村田)

Nginxは、URLやHTTPヘッダーで負荷分散可能なスマートなロードバランサーとして機能します。同時に、キャッシュサーバーとしても大きな効果が見込めます。

「たとえば、Apacheなどを用いた既存システムのフロントにNginxを配置し、リバースプロキシおよびコンテンツキャッシュ機能を持たせることで、既存システムにほぼ手を入れることなくスケーラブルな構成を実現できます。バックエンドの処理負荷を軽減することで、システム全体のパフォーマンスも向上させられます。大規模なシステムを持つお客様ほど高い効果が見込めるでしょう」(村田)


NginxはURLに基づくスマートなバランシング設定と圧縮、キャッシングなどのWebアクセラレーションに特徴がある

なお、サイオスでは、Nginxを含むOSSに関する技術情報をOSSよろずポータルサイトから発信しており、NginxをはじめOSSの普及やコミュニティー活動を後押ししています。

さらに、このNginxにエンタープライズ向けの機能とサポートが付加されたのが「NGNIX Plus」です。日本向けの製品サポートはサイオスが提供し、セキュリティーアップデートはNginx, Inc.から提供されます。

有償のNGINX Plusには、マルチコアに対応したHTTPおよびTCPロードバランシング、リアルタイム監視およびステータスレポーティング、詳細なヘルスチェック、無停止での設定反映、ストリーミングメディアなどの動画配信機能が備わっています。

基幹システムのクラウド移行を促すIaaS環境のHAシステム

ところで電子メールやファイル保管・データ共有、サーバー利用など、エンタープライズにおけるクラウドサービスの利用が進む一方で、情報セキュリティー面の課題も無視できません。特に、情報資産を保護するための三要素(機密性/Confidentiality、完全性/Integrity、可用性/Availability)のうち、可用性がクラウド(IaaS)導入のネックになっている、といった調査会社からの報告もあります。

村田に続いて登壇したサイオステクノロジーBC事業企画部の五十嵐久理は、「ミッションクリティカルな基幹業務を支えるアプリケーションのクラウドへの移行が増加傾向にありますが、アプリケーションが停止すれば、自社の業務のみならず顧客や取引先へも影響が及びます」と指摘。「そうならないように、クラウド移行後もシステムダウンタイムを短縮し、ビジネス損失を最小化する必要性がユーザー側に生じます」と述べました。

クラウドサービス事業者が提示する仮想サーバーのSLAは一般的に、高可用性を担保する部分が限られています。ハードウェア、仮想基盤、仮想マシン、OSはサポートされても、その上で稼働するユーザー側で導入する業務アプリケーションやミドルウェアまでは含まれていません。


「アプリケーション側の責任範囲は利用者側にあります」と指摘するサイオステクノロジーBC事業企画部の五十嵐久理

「高性能な物理サーバーを利用できるベアメタル クラウドサービスならではの課題もあります。ハードウェアが故障した際の部品交換や、出荷時状態に初期化されたディスクの復旧といった故障リスクにユーザー側で対応する必要があるという点です。クラウド上での可用性を考慮する際には、要件に応じて手段を選択しなければなりません」(五十嵐)

こうした課題を解決するため、サイオスでは主要なクラウドサービスにおけるHA(高可用性)システムの動作検証実施およびその結果をまとめたホワイトペーパーを提供しています。さらに、HAクラスターソフトウェアLifeKeeper認定済みのクラウドは、サイオスによるサポートが適用されます。

さらに最新のCloud HAソリューションは、Linux/Windows環境における共有ストレージ構成、ローカルディスク構成、仮想サーバーおよびベアメタルなどに柔軟に対応します。

「物理サーバーの場合、LifeKeeper、および共有ディスク不要でミラーリングを行えるデータレプリケーションソフトウェアDataKeeperを活用すれば復旧時間を最小限(数十秒~数分)に短縮することができます。SoftLayer上でも検証済みです」(五十嵐)

「グローバルなエンタープライズクラウドであるSoftLayerは、時差も国境も超えたミッションクリティカルなアプリケーション稼働環境として活用が進んでいますが、前述のように利用者自身が考慮すべき高可用性確保のためのポイントがあります。SoftLayer上でミッションクリティカルなシステムを稼働させる場合は、LifeKeeper/DataKeeperを思い浮かべてください」と五十嵐は述べました。

さて、前後編に分けてレポートしたセミナー、お役に立ったでしょうか。クラウドを活用して市場を切り開くイノベーションのヒントとして、ぜひご活用ください。

⇒ 前編「Nginxによる驚異的なWebアクセラレーション」記事はこちら