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〔Vol.5〕 災害などから重要データを守るための解決策「Dynamic Disaster Recovery」

【VOICEs - 技術解説インタビュー】今回紹介するソリューションは、HAクラスターソフトウェア「LifeKeeper for Linux v9.1」を用いた「Dynamic Disaster Recovery」です。BCP対策とビジネスを多様化するクラウド活用を支援します。

テクノロジー2016年7月27日

最小限の稼働システムでデータをレプリケーション

― LifeKeeper for Linux v9.1(以下、v9.1)発表のタイミングで2つの情報が公開されます。2つめが、DR(ディザスターリカバリー)に関するソリューションをデザイン・検証した内容ということですね。大規模な自然災害が相次いで起きる中で、お客様の関心も高まっているのではないでしょうか。
五十嵐:災害や事故などにより万一、業務に不可欠な重要データが消失することがあれば、事業継続性や、企業経営における信頼性に重大な影響を及ぼしてしまいます。DR環境の構築はそのための備えになります。そこに投じられるコストをできるだけ抑え、いざという時に機能するDR環境をデザインおよび検証したいと考えて取り組んできました。

小野寺: DR環境を実現するには、遠隔地にしかるべきファシリティを備えたDRサイトを構築・運用する方法があります。これは設備投資だけでなく人件費などの定常的なコスト負担が生じること、そして災害が起きてプライマリーサイトが復旧するまである程度の期間にわたって、DRサイトが稼働し続けることを念頭に置いた体制が必要になります。こうした負担を軽減するために私たちは、LifeKeeperとクラウドサービスを連携した仕組みを考案しました。

五十嵐:各種クラウドサービスの中でも、Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)とLifeKeeperを有効活用したDRソリューションのデザインおよび検証を行いました。今後、その成果を段階的に開示していきます。


サイオステクノロジー BC事業企画部 BC事業企画グループ グループマネージャー 五十嵐久理(左)と、同グループ エバンジェリストの小野寺章(右)

― ただ、クラウドサービスとはいえ、インスタンスをずっと立ち上げ続けていれば、やはりコストがかさむのではないでしょうか。
五十嵐:そこで平時においては、最低限のアプリケーションだけ稼働させておき、本番サイトがダウンしたという時に、EC2上に構成したDRシステムの「起動装置」をキックします。そこで動的にクラウド上にDRサイトを立ち上げ、業務を速やかに再開するというアプローチをとります。ソリューション名である「Dynamic Disaster Recovery」は、静的にではなく「動的に」DRサイトを構築することに由来しています。

オンプレミスのクラウドへの移行を見据えた取り組み

小野寺:クラウドサービスは数多くありますが、その中からAWSを選択した大きな理由は、複数のDRのシナリオにそった機能やサービスがあらかじめ用意されていることです。特にそこで着目したのが、「パイロットライト」というシナリオです。

クラウドサービス上のDRサイトのほうは種火をつけた状態にしておき、普段はこの状態でオンプレミスとの間でデータの同期を行います。具体的には、Amazon EBS(Amazon Elastic Block Store)にVPNを介してデータを送り込みます。データの転送には、サイオスが提供するデータレプリケーションソフトウェアDataKeeperを利用することを想定しています。今回、AWSをサポートするパートナー企業と連携して共同検証を進めています。


パイロットライトにおける準備フェーズから復旧フェーズへの移行イメージ

小野寺:この方法であれば、VPN回線用の設備費用は別途かかりますが、インスタンスの費用は1時間あたり0.05ドル、年間数万円ほどで済む見通しです。設備投資を抑え、平時および、災害からの復旧期間の運用が効率化できるものと期待しています。

― なるほど。今後は、AWSのほかのシナリオや、他のクラウドサービスについてもLifeKeeperを組み合わせたソリューションのデザインや検証を行うのでしょうか。
小野寺:はい。市場ニーズに応えながら進めたいと考えています。
サイト間のIPアドレスの切り替えにLifeKeeperを用いた場合に、ファイアウォールの設定やパフォーマンスの調整などをどうするべきかなど、検証するべき点は多々ありますので、実運用を想定した検証を実施して行きます。

ほかにも、DR発動後にシングルで立ち上がったクラウド上のDRサイトを、そのままスタンバイ型のHAクラスター構成に切り替えていくといった復旧・復興期間における運用シナリオの実現手法についても検証中です。

五十嵐:DDRで期待される効果は、オンプレミス-クラウド間でのハイブリッドな実用的かつ低コストの災害対策の実現だけではありません。例えば、オンプレミスからパブリッククラウドへの本格的なシステム移行のシナリオ作りなどにも応用できることでしょう。

BCP対策を無理なく行いながら、お客様のビジネス競争力を強化する「クラウドへの定着と応用」に踏み出す一歩をサイオスがお手伝いできればと考えています。お気軽に、私たちにお声掛けください。

正式版のリリースが待たれるLifeKeeper for Linux v9.1。
お客様のビジネスの広域化と国際化、スピードアップ、そして経営における信頼性の確保に向けて、さまざまな強化がなされています。ぜひ、貴社ビジネスにご活用ください。


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