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AIを用いた子宮肉腫の術前画像診断システムを開発

2022年11月17日サイオステクノロジーテクノロジー

東京大学医学部附属病院の曾根献文講師、豊原佑典医師、大須賀穣教授、黒川遼研究員、阿部修教授および、サイオステクノロジー株式会社の野田勝彦、吉田要らの研究グループは、人工知能(AI)を用いて、子宮肉腫の術前MRI画像の診断システムの開発に成功し、研究成果について発表しました。

【発表のポイント】

【発表の概要】
悪性腫瘍である子宮肉腫(注1)は、1万人の女性につき5人程度が発症する稀ながんです。同じく子宮から発生する子宮筋腫は、良性腫瘍で成人女性の20~30%程度が罹患すると考えられています。子宮肉腫は子宮全摘手術を行う必要がありますが、子宮筋腫は子宮全摘手術のほかに子宮を温存する方法など、治療方法は多岐にわたります。患者さんの将来を考えて治療方針を検討する上で術前診断は欠かせません。近年、術前診断の精度は向上してきましたが、臨床現場では子宮肉腫と子宮筋腫の鑑別診断が難しい症例もあり、術前診断のさらなる精度向上が望まれています。
こうした背景のもと、東京大学医学部附属病院の曾根献文講師、豊原佑典医師、大須賀穣教授、黒川遼研究員、阿部修教授および、サイオステクノロジー株式会社の野田勝彦、吉田要らの研究グループは、人工知能(AI)を用いて、子宮肉腫の術前MRI画像の診断システムの開発に成功しました。

子宮肉腫と子宮筋腫の患者さん263例の術前MRI画像を用いて、深層学習(ディープニューラルネットワーク、注2)および評価を行ったところ、正診率91.3%と高い診断能力が示されました。これは同症例を診断した放射線科専門医(注3)の正診率88.3%に匹敵する結果です。また放射線科専門医の資格取得に向けて修練中の放射線科専攻医がAIの診断結果を診断補助として利用したところ、80.1%であった正診率が92.3%まで上昇しました。

AIによる子宮肉腫の術前MRI画像診断の検討は、すでに国内外で報告されていますが、深層学習による報告は今回が初めてです。深層学習は、画像診断との親和性が高い手法と考えられ、術前診断の精度向上や診断補助のほか、本研究グループが開発したアルゴリズムをもとに、AIが自動で子宮の病変を見つけて診断する自動診断技術への発展など、実際の臨床現場でのさまざまな応用が期待されます。

本研究成果は、日本時間11月16日に英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

詳細は添付ファイルをご覧ください。
リリース文書

(注1)子宮肉腫
子宮から発生する悪性腫瘍です。治療には子宮全摘手術が必要となりますが、良性腫瘍の子宮筋腫と似た画像的特徴を持つことがあり、正確な術前診断が必要となります。

(注2)深層学習(ディープニューラルネットワーク)
深層学習とは、機械学習の手法の1つであり、多層のニューラルネットワークまたは複数の機械学習アルゴリズムを組み合わせた手法のことを指します。

(注3)放射線科専門医、放射線診断医
放射線科医は、放射線を用いて治療を行う「放射線治療医」と医療画像を用いて診断する「放射線診断医」に分かれています。
また、公益財団法人日本医学放射線学会が定める研修を経て試験に合格し、放射線科全般におよぶ知識と経験を一定以上に有する放射線科医を放射線科専門医といいます。