エンタープライズでOSSを上手に活用するには

【VOICEs - 社内インタビュー】 赤い帽子でおなじみのRed Hatとサイオスとは長年にわたってオープンソースソフトウェアの市場拡大を目指してきました。近年は、エンタープライズクラウドの進化とOSSがますます切り離せなくなっています。うまくOSSを活用するコツとは。サイオステクノロジー Red Hat事業企画部長の長谷川哲也が答えます。

2015年6月17日

やりたいことを素早く実現できる道具

― ソースコードが公開されたオープンソースソフトウェア(OSS)が、一般の企業や官公庁などでも広く使われる時代になってきました。

IT業界に身を置いて、かれこれ20年以上になりますが、いまから15年以上前、2000年頃にOSSの導入を積極的に検討している企業は、ほとんど見聞きしたことがありませんでした。

しかし、今日状況は大きく変わりました。たとえばWebサーバーはApache、アプリケーションサーバーはTomcat、DBサーバーはPostgreSQLなど、OSSは業態を問わず、ごく一般的に企業の業務システムに使われています。また、お客様の業種も製造、流通、金融、通信など多岐に渡ります。生産性を高める業務システムの構築・運用、そしてスピーディな新サービスのリリース、効果的なマーケティングやプロモーションなど、ありとあらゆる局面で欠かせないものになっています。

― 日本のOSS市場にいち早く火をつけた一社が、サイオステクノロジーでした。

そうです。サイオスは1997年の創業以来、Red Hat社と協業し、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)の販売店およびサービスプロバイダーとして、オープンソーステクノロジーを提供してきました。創業間もない頃は、OSSといえばLinux、といってもよいほど、OS(基本ソフト)が注目されていました。ただ、15年ほど前の企業における業務システム基盤は、商用UNIXサーバーやWindowsサーバーなどが中心です。Linuxは半導体メーカーの設計システムで試行的に利用されるといった、ごく特殊なケースがある程度でした。

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サイオステクノロジー Red Hat事業企画部長 長谷川哲也

そうした中、サイオスの強みは、特定のプラットフォームに依存せず、利用者目線のニュートラルな立場でOSSを全面的にサポートできる、という点にありました。

ソースコードが公開されたOSSには大きく2種類あります。利用者が自由に利用できる無償版と、メーカーの保守サポートがサブスクリプション契約などで付与される商用版です。無償版を社内のエンジニア個人や一部の部門で試験的に利用していても、どのように本番環境でOSSを活用すればよいのかわからない、というお客様が多くいらっしゃるのが実情です。そこで「まずはサイオスに相談してみよう」という問い合わせは、以前からかなりありました。

2000年頃、サイオスは日本国内では唯一、Red Hat製品をサポートできるディストリビューターとして、市場の裾野を広げていたからです。

― ところで、長谷川さんにとってOSSの魅力とは何でしょうか。

ICTで使われる技術をリードする存在であると同時に、それを用いて企業経営のスピードアップに貢献できることですね。

かつて業務システムの開発といえば、システム開発ベンダーに利用者側の要望を伝えて、要件定義からプログラミング、テスト、リリースまでに数カ月から数年かかる、という光景が普通でした。ただ、半年〜1年も経てば、システムを利用する業務部門やその先にいるお客様、取引先などの要望は当初のものと変わってきてしまいます。システム開発に何年もかかるようなやり方では利用者の不満も高まりますし、経営環境の変化に耐えられません。

それに対して、Red Hat社のミドルウェアを使えば、アプリケーションレイヤーの柔軟性を高め、開発コストや維持コストを下げることができます。

「クラウドファースト」と言われますが、仮想化技術やクラウドサービスが浸透する今日、ものの5分もあれば必要なスペックを備えた基盤が整います。10年前とは、もはや別次元です。こうしたクラウドサービスの急速な進展も、OSSがリードしています。

OS以外の製品ポートフォリオを拡充

― そうしたOSSにおいて、「Red Hat社 = Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」というイメージが強くありますが。

ところが、Red Hat社はLinux OS以外の、ミドルウェアやクラウド製品などのポートフォリオを拡充しています。Red Hat社イコール、Linuxという印象をお持ちのお客様には、意外な感じがするかもしれませんね。


Red Hat社の製品群

キーになるのは、「XaaS」といわれるエンタープライズクラウドです。IaaS基盤のOpenStack、PaaS製品のOpenShift、ハイブリッドクラウド管理のCloudForms、JBossブランドの各種ミドルウェア(RedHat JBoss Middleware)などの製品群です。

サイオスとしてもそうした動きを注視しつつ、お客様にとってどのような製品、OSSを組み合わせるのが最適なソリューションとなるのか検討し、ご提案しています。インフラからアプリケーションレイヤーまでありますが、Red Hat製品をピックアップしながら、お客様のご要望や経営競争力強化につながるソリューションの一端をご紹介したいと思います。

業務システムの構築に、OSSがさらに浸透

― まず、企業などにおける業務システムでは、どうでしょう。

業務システムでは、IT部門が社外のクラウドサービスなどを利用して、オンプレミスのシステムとハイブリッド型にしたプライベートクラウドを自社で構築・利用する事例が増えています。ただ「AWSの運用コストは安い」といっても年に換算すればやはりそれなりの金額になります。それを自社で構築できるのが、OpenStackの商用ディストリビューションの一つ、Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platformです。自社の利用部門に対して、あたかもAWSのように、ITリソースの時間貸しや課金の仕組み、あるいはその利用度合を分析することで自社のIT投資を適切に管理することが可能になります。

ほかにも、エンタープライズ仮想化ソリューションを提供するハイパーバイザー製品も、企業内に事業基盤を素早く構築する上で役立ちます。Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV)は、VMwareに匹敵するハイパーバイザー機能を有しながら、価格はその数分の一程度という製品です。VMware ESXi上でWindowsやRHELなどのゲストOSを利用されるお客様は多いと思いますが、たとえば、RHELのところだけでもRHEVをハイパーバイザーとして利用すれば、仮想化プラットフォームとゲストOSのどちらもRed Hatのサポートを受けることができます。もちろん、RHEV上でWindowsも稼動させることも可能です。Red Hatは、OSだけでなく、仮想化プラットフォームについても、特定製品に縛られない中立性を保っているので、このように柔軟なご提案ができるのです。

― SI企業にとってのOSSはいかがでしょう。

SI企業にとっても、他社との差別化においてOSSを採用することが戦略上、重要な鍵となってきています。クラウド上でのインテグレーションやクラウド連携のインテグレーションが増えているようです。どのシステムをオンプレミスで提供し、どれをクラウドで提供するのか、これは各SI企業の持つ手腕にも依りますが、OSSで提供できる割合が高くなっています。いずれにしてもSI企業やデータセンター事業者の主戦場が変わりつつあることは否めません。

崩れつつあるIT業界のこれまでの常識

― IT業界におけるシステム開発の考え方に変化を迫られそうですね。一例ですが、情報系システムにおける「DWHには物理DBが必要」という考え方にも、シフトチェンジが必要になっているようです。

150602_bu_redhat_dsc03934.jpg「データの分析には物理的にデータベースを統合するDWH(データウェアハウス)が必要」と思われていましたが、それも覆りつつあります。データ仮想化(Data Virtualization)という技術を使えば、分散したデータを集めるのに物理的な中間データベース(統合データベース)の構築やETLツールによる統合は必要なくなるケースがあります。既存システムにもほとんど手を入れませんので、リリースまでの時間短縮やコストダウンが可能になります。

DWHの設計、構築に1~2年かかることは現状、珍しくありません。その間に、新しいデータベースが追加されたり、分析軸が変更したりします。従来の設計、構築スピードでは、リリースした時にユーザーが必要とするデータが揃っているとは限りません。それに対し、ミドルウェア製品であるRed Hat JBoss Data Virtualization(Red Hat JDV)を利用すれば、あたかもそこに統合データベースがあるように利用者からは見えます。これにより、データを統合したシステムを短期間でリリースすることが可能になります